岐阜地方裁判所 昭和33年(行)1号 決定 1959年6月19日
原告 岐阜菓糧工業株式会社
被告 名古屋国税局長
主文
本件を名古屋地方裁判所に移送する。
理由
原告の本訴請求の趣旨は(一)被告が昭和三十二年十月九日なした「岐阜南税務署長がなした原告の昭和二十五年一月一日から同年六月三十日まで及び同年七月一日から同年十二月三十一日までの各事業年度の法人税の更正決定に対し原告が申立てた審査請求を棄却する」旨の決定はこれを取消す。(二)岐阜南税務署長がなした原告の昭和二十五年一月一日から同年六月三十日までの事業年度の法人税を金二十三万四千三百六十円とした決定のうち右税額を金五万二千三百円と変更する。(三)岐阜南税務署長がなした原告の昭和二十五年七月一日から同年十二月三十一日までの事業年度の法人税を金三十八万二千八百三十円とした決定のうち右税額を金五万三千六百円と変更する。(四)訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求め、その請求原因の要旨は次の通りである。
岐阜南税務署長は原告の昭和二十五年一月一日から同年六月三十日までの事業年度の利益金を金六十六万九千六百円と認定の上、金二十三万四千三百六十円の法人税を、又原告の同二十五年七月一日から同年十二月三十一日までの事業年度の利益金を金百九万三千八百円と認定の上、金三十八万二千八百三十円の法人税をいずれも同二十六年十月三十一日賦課決定し、その頃右各決定は原告に送達せられた。然しながら、原告の前者の事業年度における利益金は金十四万九千五百円であつて、その法人税は金五万二千三百二十円であり、又後者の事業年度における利益金は金十五万三千二百円であつて、その法人税は金五万三千六百二十円である。そこで原告は被告に対し右各決定につき審査の請求をなしたところ、被告は昭和三十二年十月九日右請求を棄却する旨の決定をなし、該決定は同年十二月十四日原告に送達せられたが、右決定は不法に利益を認めた決定であるからこれを取消し、更に請求の趣旨(二)(三)の通りの判決を求めるため本訴請求に及んだ、というのである。
ところで、原告は当初国を被告として、前記岐阜南税務署長のなした各決定の取消を求めたが、その後請求の趣旨を前記請求の趣旨(二)(三)の如く変更し、なお前記請求の趣旨(一)の如く審査決定取消請求を追加的変更した上、被告を名古屋国税局長白石正男と変更する旨申立てたものである。そこで考えてみるに、先ず右請求の趣旨の変更は請求の基礎に変更がないので許すべきことは勿論であるが、審査決定取消請求の追加的変更については、その申立がなされたのは昭和三十三年六月十三日であつて、右請求の出訴期間は既に経過していて、その許否は一応問題となる。然しながら、原告は既に訴状請求原因中に右審査決定が違法である旨主張しているのであり、かつ右審査決定取消請求は請求の趣旨(二)(三)における請求と実質的には同一の処分を対象とするものであるから、審査決定取消請求についてもなお当初の訴提起のときからその訴を提起したものと見做して、出訴期間の遵守ありと解すべきである。次に被告の変更の許否につきみるに、行政事件訴訟特例法第七条の適用されるのは訴えるべき行政庁を誤つて他の行政庁を訴えた場合、即ち行政庁相互の間で被告を変更する場合のみに限らず、本件の如く国と行政庁との間で被告を変更する場合にも適用あるものと解すべきである。そして、本件で原告が訴えるべき被告を誤つた点に関しては原告に故意又は重大な過失があつたとは認められない。してみれば右請求の趣旨の追加的併合(訴の変更)及び被告の変更はいずれも正当としてこれを許すべきである。
ところで、右変更後の被告に対する本訴の管轄は被告たる名古屋国税局長の所在地を管轄する名古屋地方裁判所に専属し、当裁判所にはその管轄権がないものといわねばならないので本件を名古屋地方裁判所へ移送すべきものである。
よつて、民事訴訟法第三十条第一項により主文の通り決定する。
(裁判官 村本晃 小西高秀 鶴見恒夫)